昔、教室で誰々さんの何々が無くなったと放課後に先生が言うと、自分は無関係なのになぜかいつもドキドキしていた。さらにその昔、母親の財布から小銭をくすねたり、駄菓子屋で万引きをくりかえしたり、好きな女の子にイタズラをしたり、バレるんじゃないかと常にヒヤヒヤしながら過ごしていたトラウマなのだろうか…。そんな感覚に陥ることは現在でも少なくない。
今日は、昨日手術を受けて結局死んでしまったハイブリッドを病院まで引き取りに行った。なんてことはない、トカゲが一匹死んだだけだ…。案内され診察室へ入ると、診療台の上に白い箱が置かれ、その中にハイブリッドが少し窪んだ目を閉じて横たわっているのが見えた。箱の中には花が一輪そえられている。大袈裟…いや、その時素直に有り難いと思った…。
足早に治療代の支払いを済ませて、帰りの車の中でボーッとハイブリッドの事を考えていると、ラジオから聞こえるR&Bのバラードが悪かったのか、フロントガラスにぶつかる雨粒に反射する対向車のヘッドライトが眩しかったのか、少しだけ目に涙が滲んだ…。一輪の花はやっぱり大袈裟だ…。