赤信号を目前にした俺の車の前に突然、首輪と紐を付けた茶色い犬が反対車線から飛び出してきた!スピードが落ちていたので間一髪でブレーキが間に合ったが、かなりドキッとさせられた瞬間。その、とても従順そうな面持ちの犬はとても不安げにこちらを一目して何処かへ去っていってしまった。たぶん、逃げ出したのだろう。なんだかとても気がかりな気分でバックミラーに映る後ろ姿を見送った…。
急ブレーキをかけたとき、助手席に置いてあった空のプラケースを無意識に左手で押さえていた。それでもぶっ飛んだが、割れることはなかった。
おそらく十数年前のことだが、父親の運転する助手席に座っていたとき、同じように猫か何かが突然飛び出してきて、急ブレーキをかけたとき、俺の胸の前には父親の左手があったのが、なんとなく嬉しかった事を、この出来事が思い出させてくれた。